一人二役~つくれるデザイナー・頼れる腕~ @小江戸 家具/什器製作工房MFORM

よく洋服屋さんで見かける、服を飾る際に使う商品棚。本屋さんでは、見出し本を陳列する本棚。「でもそういったものって、一体誰がどこで作っているんだろう?」。そうした疑問をお持ちになったことってありませんか?そして月並みですが、大きな量産型の工場で、機械によって作られるのをイメージするのが、一般的ともいえるのではないでしょうか(少なくても、その中の私は一人です・・・)。今回ご紹介する【 MFORM 】はそうした店舗向けの器材を、たった一人で手がけている工房です。また、デザイナーとして家庭向けの家具製作に携わるという、別の顔も持っています。大量生産工場にはない、一人だからこそ生かせる強みは何か?デザイナーとして、どんな資質を秘めているのか?今回の取材は、そこに焦点を合わせて伺いました。

小江戸発のMFORMとは

2003年1月に起業し、今年で12年目を迎える家具/什器製作工房MFORM。埼玉県は小江戸川越から、アパレル系の店舗内で使われる企業向け什器の製造や、靴べらやスリッパラックやテーブルといった、暮らしに密着したフォルム重視の生活家具を手がけ発信しています。

またそれ以外には、幼児向けの遊具や、花屋さんには欠かすことのできない花台といった、多岐に渡る木工作品も手がけています。

■子供心を捉える楽しさある見た目の遊具(左)。花をより引き立たせるMFORM仕様の花台(右)

一人二役だから小回りが利くものづくり

・デザイナーとしてのノウハウと一貫生産

起業する前に、照明メーカーで、プロダクトデザイナーとして身につけた経験と人脈。そして後の木工訓練所で習得した木工技術を組み合わせ、企画やデザインといったものづくりのはじまりから、設計や製造そして発注という終わりまでの全工程を一貫して生産できます。またデザイナーとしてのノウハウと、什器製作者としての技術は、多様なニーズへの柔軟な対応が可能であることもいえます。

・大量生産工場との違い

一般的に、元請が工場に案件を依頼する場合、まず工場の番頭や社長に案件を通してから、現場の職人に話しがおりていくため、温度差があるといわれています。そのため、寸法違いやコストパフォーマンスの開きによる職人側のモチベーション低下といった、意思疎通不足による食い違いが、元請の頭を悩ます種だともいわれています。しかしMFORMの場合、気軽に話せる「話しやすさ」が元請との関係をより深くし、必要に応じてその都度話し合えることで量産へ向け、潤滑な道程を辿ることができます。また、進行中に図面と違う要望がでた際、工場は一度規格化された案件に対しての変更がきかないため、場合によっては案件自体がなくなってしまうこともあるそうですが、MFORMの場合はそうしたことへの順応性があるため元請からも重宝され、それが今後の受注の継続といった「信頼」に繋がっているといえます。全工程を一貫して生産すると同時に、全部一人で行う受注側とのやりとり。そこには、日々のものづくりの中で培われた経験や、デザイナーとしての知識やセンス、さらには周囲から頼られる人柄といった集大成があるからこそ、MFORMの需要があるといえるのでしょう。

・こだわりの木材と通販での口コミ

材質は、佐賀県産の建築資材店から仕入れた木材を使用し、特色を損ねないよう木の良さを最大限に生かしています。また、展示会に出展した際に評価された通販カタログを出版する会社の協力によって、MFORMの存在が世間に広まり、通販による購入者の口コミ効果が、現在のリピーターとなっています。そしてここにも、一人だからこそ生かせる、一つ一つの商品に対するわずかな違いが、「味」という強みで反映され、結果それがMFORMというブランドとしての地位を築いていることも伺えます。

MFORMイズム

かつて組織という会社に属していた頃に、当時の社長から言われた一言が、今の仕事をしていく中で、大きな意味を成していると、代表の松田氏は言います。
「デザイナーだから営業だからは一切関係ない。自分がやりたいと思う仕事なら、そうなるような仕事に持っていけるように、自分が動け」。
当時、社内では職種間の分業が常識化し、会社の売り上げが伸び悩んでいた時でした。そして、そんな時期に放たれた社長の一言。その後、常に新しい企画を提案することに気づき始め、デザイナーとしてだけでなく、それ以外の分野でも結果を出せたことが、自信へと繋がっていきました。そして、その過程を経て生まれた、「人と同じことをしても意味がない」というMFORMイズムは、作品をつくる際の発想力とMFORMとしての戦術となっています。またそうした一面とは別の、「ものを作るときの自分」と、「デザインをするときの自分」という、二つの役をしっかりと分けた考え方。いうならば、完全に別々の人が行うと言っても過言ではない、そんなこだわりが、創作に繋がっているともいえます。

MFORMスタイル

・創意工夫の楽しさ

松田氏曰く、与えられた環境の中で完成するために、どうすれば効率よく生産性のある作品をつくれるか、ということが重要である反面、ものづくりにおける一番の楽しさであると話されていました。

・ビジネス展開のおもしろさ

人と同じことをしていてもつまらない!まさにデザイナーらしいクリエイティブな考えです。ビジネスとして考えていくなかで、常に新しい発想力を発信し、競合他社にはない商品をつくることで、それが同時に世間へ対しての発信にも繋がり、そこで生まれる人との出会いを通して、MFORMの存在意義と価値がより大きなものになっていくことに、おもしろさを感じると語ってくれました。

・工房でも家でもJ-WAVEを聞きながら

急な依頼が重なり、それによって納期に迫われるということが少なくないため、夜を徹して作業することもしばしばあるといいます。そうした中、常に工房ではラジオが絶え間なく流されていて、それは時に音楽を流してくれたり、時にニュースを伝えてくれたり、時におもしろい話を聞かせてくれたり、そして時刻まで教えてくれる工房に欠かすことのできない存在です。やっとの思いで納期に間に合わせ、ラジオのスイッチをオフにして家路を辿る。翌朝、いつもなら工房で聞いているはずのラジオが居間で流れていることに、どこか至福な気持ちを感じるといいます。ゆったりとした朝を迎え、大好きなブラックコーヒーを飲みながら聞くJ-WAVEに「なんて幸せなんだろう」と。

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そんな松田氏の姿を想像すると、デザイナーとしてのインテリさと、一製作者としての納得いく達成感のようなものを、感じずにはいられませんでした。

text/D乃蛇志

家具/什器製作工房 MFORM
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