2020年「経済力アピールではなく、成熟国に見合ったオリンピックを」

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↑(Pic by Flickr)

敗戦から70年、日本は焼け野原から這い上がり、世界に追いつくために、「経済優先」で多くの物事を進めてきました。それはそれなりに成功を収め、日本は世界でも有数の経済大国にまで成長しましたが、なぜかまだ私たちは世界に対して、堂々と胸を張ることができずにいます。

世界に対して堂々と胸を張れない大きな理由は、欧米のマネばかりして、日本独自のやり方で成功した事例が、まだまだ少ないのが原因なのかもしれませんが、故人・司馬遼太郎さんは生前、日本の未来について次のように述べていました。

「不用意な拡張や破壊を止めて、自然を美しいものとする優しい日本に戻れば、この国に明日はある。」

↑司馬遼太郎「自然を美しいものとする優しい日本に戻れば、未来はあるんじゃないか。」(Pic by Atpress)

日本の美しい田園もそうですが、1950年に建てられた歌舞伎座や、1931年に建てられた日本を代表するモダニズム建築、東京中央郵便局の旧局舎も多くの反対運動があったにも関わらず、取り壊しが決まり、今では真新しい高層ビルに次々と生まれ変わっています。

さらに最近では、2020年にオリンピックを控え、日本を代表するホテル、ホテルオークラ東京本館も建て替え工事が決まるなど、日本を象徴する建物はどんどん姿を消していっていることに多くの人が気づいていません。

↑取り壊された旧歌舞伎座「現代日本を象徴する建物がどんどん姿を消す。」(Pic by Flickr)

1980年に調査対象となった歴史的建造物のうち、都心部を中心に約72%が2010年までに取り壊されており、普通の家に関しても米国は約100年なのに対して、日本は半分以上の家が平均38年のサイクルで取り壊されています。

イギリスのように普遍的価値を大事にする国は、「古ければ古いほど価値がある」と考える人も多くいますが、日本の場合は中古車と同じで、入居者が足を踏みれた時点で家の価値が下がり始め、家はおおよそ30年以内に物理的価値がほぼゼロになってしまいます。

↑古ければ、古いほど価値が高いというイギリスの考え方。(Pic by Flickr)

実際、日本の人口は減っているのに対して、新築の需要は常に変わらず、アメリカと比べて人口一人あたりの建設作業員の数は2倍以上だという調査もあります。

2020年の東京オリンピックに湧く日本ですが、ホテルオークラや築地市場など、歴史的な大イベントの裏で失われていくものも限りなく多く、2008年の北京オリンピックはイベント的には大成功を納めましたが、長い歴史を持つ中国文化に大きなダメージを与えてしまったことをしっかりと理解しなければなりません。

↑築地市場「オリンピックによってまた歴史ある場所が一つ姿を消していく。」(Pic by Flickr)

日本を代表する建築家、槇文彦さんは2020年のオリンピックに向けて、「成熟した社会に見合った五輪施設の在り方を考えるべきだ」と発言しており、まず行政が文化を創造するものとして建築の価値を認識し、経済的な欲求から日本文化を守っていかなければなりません。

2008年、フランスのサルコジ大統領が、「経済生産量の測定から幸福度の測定への移行」を目標に、ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・スティグリッツ氏とチームを編成して、改革に乗り出しましたし、タモリさんも「戦後70年ニッポンの肖像」という番組の中で、「資本主義に何か手を加えて、より良いものにしなきゃいかんと思うんですよね」と述べており、成熟した先進国は経済的価値よりもさらに人々を満足させる、新しい何かを見つけていかなければなりません。

↑「経済力アピールではなく、成熟国に見合ったオリンピックを」(Pic by Flickr)

フランス大統領の特別補佐官を務め、未来予言者として知られるジャック・アタリは東京に関して、「世界に通用する普遍的な価値を創造する力が弱い」と指摘しており、「日本人は、個人の自由に対する意識が弱いため、結果的に活発に活動できる場所ができない。」と述べています。

人間は永遠には生きられませんが、都市は永続していくため、その時代に生きた人の短期的な判断が、取り返しのつかないことになる可能性も十分にあります。

次の時代を切り開く先進国らしい、新しい形のオリンピックにしていきましょう。

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ヘヤジン編集部
部屋探しが3度のご飯より好き!部屋探しによって人生をより良く変える「ヘヤ・ハッキング」の提唱者。『ヘヤじい』の愛称でもお馴染みのヘヤジン編集部員。
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