​子どもの将来は「寝室」ですべてが決まる

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(Elsie Escobar)

江戸時代初期から民間へ伝えられた諺に「三つ子の魂百まで」や、西欧の言い回しに「揺りかごから墓場まで」という言葉があるように、幼少時の経験やこの時期に形成された個人の特徴は、その後の人生においても大きな影響を与えます。

日本人は哺乳動物として、ごく自然の「一緒に寝る」という文化を先祖代々続けている唯一の先進国民であり、40年前にアメリカの文化人類学者によって行われた調査によれば、日本の9割の家庭は子どもと一緒に寝る習慣を維持していたそうです。

↑日本は「一緒に寝る」という文化を先祖代々続けてきた唯一の先進国 (Melissa Eleftherion Carr)

赤ちゃんと一緒に寝ることには、様々な利点があげられますが、最も重要視されるのは情緒の面で、イギリスの心理学者ジョン・ボルビーは、母親による「抱っこ」がその後の情緒安定や成長に大きな影響を及ぼすという「愛着理論」を提唱しました。

さらに様々なリサーチからも、「添い寝」を経験した子供は、それを経験していない子供に比べて、より幸せで安定しており、情緒豊かな人間関係を築くことができると報告されています。

↑「添い寝」を経験した子供はより幸せで情緒豊かな人間関係を築くことができる (Lotus Carroll)

また、子供は添い寝によって、成長ホルモン度、そして脳や心臓の発達に必要な酵素が増えると言われており、子供の体温や心拍数、そして呼吸の安定にも繋がることから、添い寝は情緒面だけではなく、身体面まで総合的に豊かにしてくれるようです。

赤ちゃんを一人で寝かせることを推奨する人たちは、日本人が国際間の交渉の場で堂々と自分の意見を言えるようになるためには、欧米のように生まれた時から一人で寝かせる必要があると述べるかもしれませんが、本当の意味での自己表現能力は、「遊ぶ体験」から作られると、「子どもの将来は「寝室」で決まる」の著作である篠田 有子さんは述べています。

↑本当の自立精神は「部屋」からではなく、「遊び」から生まれる (Benedick Mark Chan)

篠田さんによれば、子供は2歳前後から「〜したい、だけれども〜する」という「自己内対話」ができるようになり、周りの環境や人と対応するようになるらしく、そのときに子供の「気持ち(自我)を親が受け止めて、意味付けして(言葉に直して)、切り返す(親の気持ちも伝える)」という共感的なかかわり(応答)を言葉やジェスチャーで丁寧に繰り返すことで、「第二の自我」と呼ばれる社会的自己が形成されていきます。

ちょうどこの時期は言葉の習慣期でもあり、自分の感情や意志を表現する言語能力の開発が期待され、面倒くさがらずに、子供の言葉を受け止め、親の考えを言葉で伝える努力をすることで、論理的思考を養うトレーニングにもなるようです。

↑論理的思考を養うためには子供の言葉を受け止めて、意味付けてして切り返す (amanda tipton)

添い寝文化は、親子と子供の間で怠りがちな言葉でのコミュニケーションを改善し、3歳〜4歳までの自我形成の時期にしっかりとした肉声でコミュニケーションを取ることを促進します。

また親子で「川の字」で寝ることは夫婦関係にも大きな影響を及ぼし、篠田有子さんの著書によれば、就寝時の夫婦の距離感が遠くなればなるほど離婚率が高くなり、別々に寝ている、もしくは別室で寝ていると答えた人の半数が離婚を考えたことがあるのだそうです。

夫婦間の関係は幼少期の子どもの感情にも大きな影響を与えるため、子どもと一緒に寝ることで夫婦間の絆も、子どもの情緒面も豊かにできるのであれば、それに越したことはないのかもしれません。

↑「川の字」で寝ることは夫婦関係にも大きな影響を及す (Elsie Escobar)

新しい明治の時代を迎えた日本は、ヨーロッパやアメリカを手本にして国作りを進め、文明開化の名の元に従来の文化や伝統をどんどん切り捨てていきました。

しかし、「断髪令」や「脱刀令」ともに「添い寝禁止令」が出されることはありませんでしたし、第二次世界大戦後、GHQの統治下となり、日本の文化や歴史をすべて否定されても、家族の「寝かた」まではアメリカナイズされませんでした。

↑日本の文化は否定されても、「寝かた」はアメリカナイズされることはなかった (wikipedia)

現在、グローバリズムが本格化し、経営から文化まで新しいものがどんどん日本に入ってきていますが、グローバリズムとはすべての文化を受け入れ、それに適合するわけではなく、「ここからここまでは、海外の文化を受け入れるけど、ここからここまでは、自分たちの文化を維持しますよ」と上手く線引きすることを意味します。

歴史の転換期には過去の歴史を一気に捨てる日本ですが、「添い寝」だけは否定されず残っていることを考えると、「添い寝」はこれからも次の世代に伝えていかなければならない大切な伝統文化なのかもしれません。

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中山実生 (Leading&Co.)
ロンドン在住。ロンドン大学ゴールドスミス、ダンス・ムーブメント心理療法修士課程在学。子どもの労働問題に関して多方面で執筆。「内発的発展と教育」(新評論出版)共同執筆。広島出身。
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