本を読んだら、運賃が無料になるバス。音読したら、カット代が無料になる床屋。

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本を読んだら、運賃が無料になるバス。音読したら、カット代が無料になる床屋。

(Eyal Tutsch)

スティーブ・ジョブズは、19世紀の詩人ウィリアム・ブレイクの詩が大好きだったと言われていますが、ビル・ゲイツにしろ、手塚治虫にしろ、いつの時代も歴史に名を残す人は読書家が多く、哲学者のデカルトとソクラテスも「全て良き書物を読むことは、過去の最も優れた人々と会話をかわすようなものである」と読書のすばらしさを伝えています

↑いつの時代も先見性のある人たちは、読書家が多い。(Jens Schtt Knudsen)

しかし、アメリカでは、本離れが近年深刻になってきていて、アメリカの超党派シンクタンク「ピュー研究所」の調べによれば、1978年の調査の時と比べ、本を読まなくなった人が2014年には3倍にも膨れ上がっていることが分かっており、こうした問題を受け、人々に本をもっと読んでもらおうと、読書推進運動が全米で広まり始めています。

アメリカのワシントンDCのある調査によれば、児童書が子ども830人に対し1冊の割合でしかこの地域に存在せず、この現状を打破するべく、アメリカの格安航空会社ジェット・ブルーは、無料で児童書をもらうことができる自動販売機をワシントンDCのアナコスティア地区に設置し、これまでに16000冊を寄付しました。

↑周りに良い本がないことも読書量が減っている大きな原因。(forune cookie)

ワシントンDCに住む本が大好きな7歳の少女イヤナ・ジョージちゃんは、現在たくさんの本を持っており、それらの本は「自動販売機からもらったんだ」とインタビューで答えていて、この読書推進プログラム「ソアー・ウィズ・リーディング」(開いた本を鳥の羽に例え、"読書で飛びたて"のメッセージ)のおかげで、子どもが本に触れられる機会が奪われずに済んでいます。

子ども向けのミステリーを執筆する作家ロビン・スティーブン氏は、読書をすることは、子どもの人生を大きく左右することだと、読書の重要性を次のように述べています

「読書は子どもに夢を見る能力を与えます。本は、他者の人生がどのようなものかを教え、自分自身の人生はどうなるのかを教える指針となるのです。」

↑読書をする子供と、読書をしない子供。将来のビジョンは大きく変わる。(Andrew Alberson)

読書の効能として、判断や論理などを司る認知機能の向上にも良いということが、イギリスの教育研究所のリサーチでも明らかになっており、読書によって知識を得るだけでなく、考える力が発達することが分かってきています。

さらに、ラッシュ大学総合医療センターのウィルソン博士の研究でも、継続的に読書をしている人とそうでない人の記憶能力は、およそ89歳の時点で32%も差が出ることがわかっていて、年をとっても読書が与える脳への刺激が脳の機能をしっかりと守ってくれることを示唆しています。

その他にも、アムステルダム大学でマネージメントと組織を教えるバル准教授の研究では、フィクションを夢中で読む事によって人の共感能力が上がるということが明らかになっており、社会生活において欠かせないコミュニケーションスキルを向上させることに読書が役立つ可能性も示唆されています。

↑年を取っても常に読書をしているだけで、記憶力が32%も上がる。(Haed Masoumi)

人々にもっと本を読んでもらおうと、地域住民によるユニークな読書推進活動も行われています。

ルーマニアのクルジュ=ナポカという街では、本を開くだけでバスの乗車料金が無料になるという活動を今年6月に行い、これがフェイスブック上で話題となって、どのバスにも必ず1人は読書をする人が乗っていたという成功を納めたため、発案者で地域活動家のビクター氏は「定期的にこのイベント"トラベル・バイ・ブック"を行いたい」と話しています

↑本を開くだけで、バスの乗車料が無料。(Steve Rhodes)

アメリカのアイオア州で床屋を営むコートニー・ホームス氏は、地域のイベントで「カット中に本を音読するだけで料金無料」という床屋ブースを1日開きましたが、彼はその盛況ぶりに驚きを隠せませんでした

「正直言って驚いたね。初めは列に4人しか子どもがいなかったのに、次に見た時には20人くらい並んでたんだ。皆、散髪しながら本を読みたいと待ってたんだ。」

↑本を音読するだけで、カット代無料。(Evelina nder)

日本でも、本を読まない人の割合は2002年から2013年の間に10.9%も増えており、本離れが深刻化していますが、日本での読書推進活動はあまり良い結果を収めておらず、その理由としては、学校や図書館など文化省を中心として行われてきたため、「読書=勉強」という枠から抜け出せていないことが考えられます。

学校などの教育機関主導だけではなく、地域の人々が中心となって読書推進活動に取り組めば、生活のあちらこちらで子供たちに読書を楽しむヒントを与えることができるようになります。

場所の垣根をなくすだけでなく、「漫画ばかり読んでないで」とか「感想文のために読みなさい」などと言って子供に与えている教育的なプレッシャーを親が控え、子供たちがどこでも自然と面白いと感じる本を手に取れるような生活の土台を築けば、すばらしい個性がせめぎ合うような21世紀を子供たちと一緒に迎えることができるかもしれません。

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関 希実子 (Leading&Co.)
「No」と言えない日本人代表。多民族・多文化都市シドニーに移住したことをきっかけに、イージーな価値観を勉強中。
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