30キロ離れたパブ「同じモノを持っている人よりも、 同じ経験を共有している人との方が繋がりが強い。」

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(Sam Howzit)

現代人は1日に平均で、1.72時間をフェイスブックやInstagramを利用するのに費やしています。これは人間の1日の活動時間の28%にも相当し、私たちは地球の裏側の出来事や美しい景色などを瞬時に確認することができますが、それは私たちが実際に、その場所に行ったときと同じような感動を与えてくれないことは誰もが知っている事実です。

コーネル大学の心理学者トマス・ギルビッチ教授が、お金と幸せの関係について調べた調査で、人は"もの"より"経験" にお金を使った方が、幸福感をより得られるという事がわかっており、 最近の若者が以前よりも旅行にお金を使うようになってきていることからも、世の中の価値観が少しずつ変わってきている様子が伺えます。

↑モノよりも経験へ。少しずつ変化は現れてきている。(Moyan Brenn)

スコットランド(イギリス)の西のはずれにある、Knoydartという地域には携帯の電波はなく、道という道すらもありません。

訪れる人は約30キロの道を歩くか、1日に2回しかないフェリーを使うか、またはヘリコプターで上陸するかというほどの疎開な地域ですが、そこには「世界でビールを楽しむパブ」というランキングでトップ10に選ばれたThe Old Forgeというパブがあり、 この立地条件にもかかわらず 、バーを目当てわざわざ遠くから足を運ぶ観光客が増えています。

↑Knoydart「携帯の電波はもちろんのこと、歩く道さえほとんどない。」(GariochT)

パブのルールも独特でオーナーのイアン・ロバートソンさんは、一切の電気器具の持ちこみを認めていないというこだわりがあり、インタビューで次のように答えています。

「この店にはテレビはあるけどつけないし、またWifiも置いていないんだ。特にお店が混んでいるときはインターネットやiPhoneから少し離れてお客さん同士で楽しんでもらいたいからね。」

↑iPhoneから少し離れて、本来の人間のあるべき姿を取り戻す。(Steve Welburn)

さらに南極大陸のGalindezという直径が800mしかなく、人よりもペンギンの数の方が多いという小さな島にも、Faraday barというパブがあり、もともとイギリスの調査機関の拠点地だった場所ですが、そこで飲むウクライナ産のヴォッカと、そこにしかないストーリーを求めて人々が世界中から集まってきます

このバーでは ウクライナ産のヴォッカが格安の300円、また女性は"下着を寄付すると一杯無料"というルールもあり、ある常連さんは、「観光できたドイツ人の女の子が酔っ払ってドクターにお世話になった事もあるし、酔っ払った女性がいきなり脱ぎ始めちゃったこともあるよ!」というように、長期的には価値が薄れてしまう物質的なものとは違い、思い出の価値はいつまでたっても変わりません

↑自分は覚えていなくても誰かが覚えている。(Carol Lazzaretti)

ギルビッチ教授が行った研究では、同じものを持っている人よりも、同じ経験を共有している人との方がつながっている感があり、幸福感が増えるということもわかっているように、新しいiPhoneやパソコンを買った自慢話より、友達と思い出話をした方がよりハッピーな気持ちになれるのは、誰もが経験のあることなのではないでしょうか。

↑同じものはすぐに買えても、同じ経験はすぐには作れない。(Seemab Saqib Khan)

また、ものを買った時と、経験にお金を費やした場合の幸福度の違いを調査した研究では、旅行や休暇など経験を待っている時間は、人の期待とワクワク感がありますが、インターネットで注文した商品や買い物をして長い列に並ぶ時など、物質的なものを待っている時は、早く届かないことにイライラし、ちゃんと届くかどうかなど、不安も煽られる気持ちが強いという違いも証明されているように、ものより経験に投資した方が自分のモチベーションを上げてくれ、長期的な人生の満足度にも大きな影響をもたらします。

↑モノを待っている時は、不安な気持ちなることが多い。(Beverley Goodwin)

物質的なものは量や値段で簡単に比較ができるので、その差で他人より劣った時、私たちはとてもネガティブな気持ちになりますが、旅行や休暇などは、その違いを肯定的に捉えることができるため、考え方によっては、ポジティブな気持ちを増幅させることもできます。

経験を買っても結局一時しか楽しめないし、その経験が良い思い出になるとも限らないという人もいるかもしれませんが、これからの時代は物理的なモノよりも、その場所で起こったハプニングやトラブルなども含めて、後になっては良い思い出になるという、「一方的な考え方」の方が価値のある時代なのかもしれません。

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日色ともみ(Leading&Co.)
ロンドン在住。ロンドン大学SOASにて開発学と政治学専攻中。趣味はカポエイラ。千葉県出身
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