​車は街に入れず、移動はすべて船。不便でも、オランダで最も住みたいと思われる街「ギールホールン」

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(piotr iłowiecki)

現在、オランダで最も住みたい街の一つに選ばれる「ギールホールン」という街は、主な交通のインフラは水路で、そこに住む人たちは用事があれば船で移動し、車は街に入ることすらできません。

ほとんどの家は、それぞれの独立した小さな島に建っており、水路が凍る冬は、スケート靴を履いて移動するなど、一見すると明らかに不便に見えますが、この街に住む人たちは、この不便さすらも楽しんでいると言われています。

↑移動手段は船がメイン。(David van der Mark)

一方、多くの大都市では、人口が増え続け、人口密度が高い場所で快適に暮らせるシステム(地下鉄やモールなど)が普及していく中で、生活環境はどんどん複雑化していき、さらに社会が「もっと働いて、もっと稼げ。」と笛を吹くため、人間の忙しさはそろそろ限界に近づき始めているようにも感じます。

↑今後も都市の人口は増え続け、私たちの生活はさらに忙しくなる。(Nana B Agyei)

「サピエンス」という本を出版した、歴史家のユヴァル・ノア・ハラリ氏は幸せについて考え方が変わってきていると指摘した上で、「石器時代の方が幸せだったかもしれない」と述べています。

また、最新のアメリカ国民を対象とした調査では、年収550万円稼いでも、250万円しか稼いでいない人たちより満足度は9%しか増加せず、プリンストン大学の調査では年収750万円に達すると、それ以上いくら稼ごうが、日常の幸福度の差に大きな変化は見られなかったと報告しています。

↑お金持ちになりたいのか。それとも幸せになりたいのか。(Dmitry Kolesnikov)

ハラリ氏は文明が発達したことで、人間が失った大切な要素の一つが「人間関係」だと指摘しており、物が充実して便利になっていくほど、人間同士のつながりが薄くなっていくことは、日々の暮らしの中でも感じることです。

例えば、現在は石器時代のように、仲間と共に命がけで狩りに行ったり、少ない食料を周りの人たちと分けることなどがないため、そこから生まれる「人と人との強い関係」を築く機会を失ってしまっています。

また、世界一貧乏な大統領として知られる、ウルグアイの大統領ホセ・ムヒカ大統領は、本当に貧乏で不幸せな人は、少しのモノしか持っていない人ではなく、無限の欲がありいくらあっても満足しない人の事だと指摘した上で次のように述べています。

「発展は幸福を阻害するものになってはいけません。発展は人類に幸福をもたらすものではなければいけません。私たちは発展するために生まれてきているのではなく、幸福になる為に生まれてきたのです。その幸福とは、家族を持ち子供を育てる事、友達を持つ事、そして必要最低限のものを持つ事なのです。」

↑不幸な人はモノを持たない人ではなく、欲が果てしなく多い人。(OEA - OAS)

GDPに変わる指標として注目されている「World Happiness Report」で幸福度が高い国の上位は、どの国も経済規模が小さく、福祉が発達した中でシンプルな暮らしを徹底している国々であり、「不便」を増やすことで、人間関係が必然的に必要になるギールホールンが、オランダで最も住みたい街に選ばれることは、特に不思議なことではないのかもしれません。

もし本当に縄文時代の方が幸せであったのであれば、なぜ私たち人間は、文明を発達させ続けているのかと首を傾げしまいますが、その答えは未来の人たちが決めるとして、少なくとも現在はテクノロジーの発展とは逆行するように、生活のスタイルをどんどん昔に戻していくことが、幸せになる一番の近道だと考える人たちは少なくありません。

大都会にこだわる人たちは、本当の不幸を身にしみて感じるまで、働き続けるつもりなのでしょうか。

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夏目 力 (Leading&Co.)
リーディング&カンパニー創業者。
スーツが嫌いで、レッドブルとお風呂が大好きなクリエイター。現在、スイスに住む方法を東京で模索中。
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