チョコレートの首都ブリュッセル「手作りのチョコレートは大量生産のチョコレートよりも、心理的な興味をそそらせる」

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(Brieuc Kestens)

ヨーロッパの中心部に位置し、人と文化が交差し合うベルギーは、オランダ語、フランス語、そしてドイツ語が話される多言語国家で、国外からも多くの人が移入していますが、その首都ブリュッセルには、国内外から500人ほどのチョコレート職人が集まっており、「チョコレートの首都」とも呼ばれ、その賑わいは街中にあふれる甘い香りから、容易く想像できます。

平均的にチョコレート消費量の高いヨーロッパの中でも、ベルギー国民の消費量は圧倒的に多く、ベルギー人が一年で消費するチョコレートの量は一人当たり8.3キロと、お菓子大国のフランスの6.3キロ、そしておやつ大国のアメリカの5.5キロを大きく引き離し、日本人と比べると約5倍のチョコレートを消費していることになります。

↑チョコレートの首都であるブリュッセル (Erin Borrini)

世界が認める高級チョコレートブランド、GodivaやLeonidas等を輩出したベルギーですが、近年、世界のチョコレートマーケットが激戦となってきて、日本やオランダなどの国から新しいアイデアを持つ優れたチョコレート職人が賞を受賞するようになったことや、隣国ドイツやオランダ産のチョコレートに世界のマーケットシェアを奪われ始めたことで、ブリュッセルのチョコレート職人たちが革新的なアイデアで王座を守ろうと奮起しており、世界最大のココア製造量を誇るバリーカレボー社のPascale Meulemeester氏も、次のように述べています

「海外の職人がベルギーに集まり、100年以上の歴史を持つベルギーチョコレートから新しいアイディアや技術を得て、それらを海外へ輸出することは、競争は激しくなるが(お互いを刺激し合うことができて)良いことだ。」

↑様々な文化が組み合わさり、競争が生まれるのは良いことだ(Nestlé)

世界中から集まったチョコレート職人によって変革がはじまったベルギーでは、チョコレートにさらなる付加価値を求め、表面と中心を分けて考え、中心部分にわさびやハーブなどの薫り高いフレーバーを注入することで、食べる人を驚かせて想像力を掻き立てる、玉手箱のようなチョコレート菓子が誕生しました。

中でもユニークなフレーバー同士を掛け合わせて、一つのチョコレートを作ることで知られるDominique Persoone氏は、ミシュランガイドにも載る3人のベルギーチョコレート職人のうちの一人でもあり、その常識では考えられないような作品につけられる名前もまたユニークで、ホワイトチョコレート、サフロン、カレーによるチョコレートには「Bollywood」(インド映画界の意)という名前がつけられています。

「食材の味そのものを試すことが大好きで、私の情熱そのものだ」と語るDominique氏ですが、オランダの有名シェフSergio Herman氏も、「彼には(味に対する)境界線が存在しない」と述べています。

↑Dominique氏「味に対する境界線は存在しない」( Food Inspiration)

オーストラリア出身のチョコレート職人Ryan Stevenson氏は、初めからチョコレート職人を志していたわけではなく、もとは統計学者を志していた異例の経歴の持ち主で、彼の数学的思考と分析力も、チョコレート界に新たなブレイクスルーを創り出しています。

2005年にブリュッセルに移住したStevenson氏は、チョコレートを作るための技術工程を研究したことで、チョコレートの混合物を溶かすベストな温度を見つけたり、気泡を作らない方法を見つけることができ、理論と研究によって2度目の国際賞に輝いた際に、ベルギーに認められることは世界に認められることだと、次のように話しています。

「私が受賞できたのは、私が今まで材料の混ぜ方から温度にいたるまで、ベルギーの職人のチョコレートに関するノウハウのすべてを取り入れてきたからです。」


↑様々な文化や学問が混ざり合ったチョコレートがブリュッセルを活気づける (TiggerT)

現代では多くのチョコレートが、工場での機械によって大量生産されていますが、ベルギーでは小さな店構えのチョコレート職人が、何世代も受け継がれたレシピと普通の道具を使って、その日その日の最高のチョコレートを一粒ずつ作っており、ベルギーチョコレートについて、ブログ執筆活動をしているRobbin Zeff Warner氏も、「本当の手作りのチョコレートを見て食すことと、それを作った人から購入することは、何か特別なものを感じるわ」と述べています

↑必要なものは、何世代も受け継がれたレシピと普通の道具 (Everjean)

ハーバード・マガジンによると、一つ一つが微妙に異なる手作りのものは、機械で作られた完璧なものよりも、心理的により人々の興味をそそり、より好まれやすいそうですが、それは、消費者だけでなく製造者にも言えることで、本当に世界に誇れる作品や食べ物の街になるかどうかは、大企業や労働者によってどれだけ大量に製造できるかではなく、それを愛する職人が世界からどれだけ集まっているかに、かかっているのではないでしょうか。

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関 希実子 (Leading&Co.)
「No」と言えない日本人代表。多民族・多文化都市シドニーに移住したことをきっかけに、イージーな価値観を勉強中。
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