​「大好きなニューヨーク」から「大嫌いなニューヨーク」へ

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20世紀末に始まった金融と経済のグローバル化がニューヨーク、ロンドン、そして東京を世界都市にのし上げ、特にニューヨークは20世紀を「アメリカの世紀」と象徴づける代表的な都市になりました。

ニューヨークは70年代に、市と州が最初は目立たない形で始めた「I Love New York」キャンペーンで国内外にニューヨークの魅力をアピールし、世界中からクリエイティブな人材を集めることに成功しましたが、現在ではその魅力は徐々に薄れ始め、綺麗な道路やショッピングセンターが並ぶ「お金持ちが住む街」に姿を変えてしまいました。

↑アメリカの世紀を象徴したニューヨーク。(Pic by Flickr)

あるリサーチによれば、現在ニューヨークの中心部、マンハッタンの平均家賃は約3822ドル(約38万円)で、少し離れたブルックリン区でも3035ドル(約30万円)と、とても夢見る若者が払える家賃ではなく、数々の賞を受賞したライターのSari Bottonさんは次のように述べています。

「あなたがまだひよっ子のライターさんなら、プライバシーもない部屋で複数の人と部屋をシェアしながら、ギリギリの生活をしなければならないでしょう。そんな状態でクリエイティブになろうなんて到底無理です。」

↑家賃だけで38万円。とても若者が払える額ではない。(Pic by Flickr)

Ipsosの調査によれば、ニューヨークは「最もビジネスがやりやすい都市」としては堂々の世界1位をキープしていますが、「住みやすい都市」としては第5位と、徐々に順位を落としており、若者アーティストが創造性を発揮する街というよりは、香港のようにビジネスがやりやすく、お金持ちが派手な生活をするための街にシフトしてきているようです。

ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガーにも選ばれているパティ・スミスさんも、ニューヨークはもう若者に対してフレンドリーな街ではないとして、「新しい都市を探すように」とアドバイスしています。

↑パティ・スミス「ニューヨークはもう若者にフレンドリーな街ではない。」(Pic by Flickr)

ニューヨークから郊外の街へ引越したライターのAlecia Eberhardtさんは、最近のニューヨーカーは初めて会う人に、「どんな職業に就いているか?」、「家の家賃はいくら払っているか?」という質問ばかりで、「あなたはどんなことが好きなの?」という質問をしなくなってきており、会話が全然楽しくないと述べています。

ハーバード大学のダニエル・ギルバート教授は著書の中で、「たいていの者は人生の中で、少なくとも3つの重要な決定を行う。それは、どこに住むか、何をするか、誰とするかだ」と述べており、充実したライフスタイルを送るためには、ニューヨークの古いイメージにとらわれず、自分にとって一番居心地の良い場所を見つけて動き続けなければなりません。

↑仕事や家賃の話より、あなたが「好きなこと」を話せる街へ。(Pic by Flickr)

1977年、大学を中退し、荷物と35ドルのお金だけを握りめ、長距離バスにのってニューヨークへ向かったのは歌手のマドンナでした。

ニューヨークに到着するとタクシーの運転手に、「この街で一番大きな場所へ行って!」と告げ、タイムズスクエアで降りたマドンナは「私はこの世界で神よりも有名になる」と誓ったと言われています。

1900年代後半、ニューヨークには世界中から様々な人が集まり、「誰もが夢を叶えられる場所」として、アメリカ時代を象徴する都市でした。

しかし、歴史をさかのぼれば、世界の中心がローマやアテネから動いたように、半永久的に栄えた都市は存在しません。21世紀に中心となる都市はまだどこか分かりませんが、少なくとも、「お金持ちが住む街」が住みやすい都市ではないような気がします。

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ヘヤジン編集部
部屋探しが3度のご飯より好き!部屋探しによって人生をより良く変える「ヘヤ・ハッキング」の提唱者。『ヘヤじい』の愛称でもお馴染みのヘヤジン編集部員。
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