リーマン・ブラザーズがリーマン・シスターズだったら、世界的な金融危機は起こらなかった。

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↑(Pic by flickr)

日本では古くから『台所は女の城』、『男子厨房に入らず』ということわざがあるように、「家庭の台所=女性の活動場所」というイメージがまだまだ一般的に根強いのが現実です。

しかし、高級レストランのようなプロフェッショナルな厨房となると、昔からトップのシェフは男性という、家庭とは間逆のイメージが定着してしまっていますが、最近はヤフーやペプシでは女性がCEOを勤め、政治や経営など様々な分野で女性が活躍し始めており、男女差別が厳しい料理の世界でも少しずつ変化が現れ始めています。

↑(Pic by flickr)料理の世界は基本、男性中心

アメリカの調査では、家庭での料理の支度を楽しんでいると答えた男性が82%に対して、女性は75%ですが、食事の支度や後片付けに従事している男性はたった42%で、いくら昔より男女平等が進んだと言っても、男性にとって料理は「趣味」、女性にとって料理は「毎日のルーティン」という家庭内の構造は今だに変わっていません。

また、日本では家族のために完璧にやらねばというプレッシャーから、女性が台所に立つとめまいや吐き気などを発する『台所症候群』という言葉さえ作られています。

↑(Pic by flickr) 料理は男性にとっては「趣味」、女性にとっては「毎日のルーティン」

しかし、2014年、Time誌が"食の神様たち"として選んだシェフ達が全員男性だったように、プロフェッショナルな料理人となると男性が大半を占め、シェフがメディアに出る頻度から、有名レストランの経営者まで、大半は男性、女性シェフの割合はたった3分の1という低い数値になっています。

80年代からマイアミでレストランを営むミシェル・バーンスタン氏は、「この道を歩んでからの最初の10年間、女性のシェフは私一人だった」と述べていますが、こう考えると、現在の3分の1という数字でさえも"飛躍的な進歩"だと言えるのかもしれません。

(Pic by flickr)女性だから勝ち残れないとは言わせない

実は、世界に名を馳せる高級レストランでさえも、料理人たちの離職率は男女問わず非常に高く、これは"Boys'Club" や"Locker-room work"と言われるような体育会的上下関係、伝統的な師弟制度、心身暴力ともとれるような教育法、そして一日10時間以上の肉体的重労働、低賃金、女性蔑視など、家庭を持っていたらとても続けられないような困難な職場環境に原因があるようです。

ミシュラン保持者のクレア・スミス氏は、この状況を「疲れている、体調が悪い、指を切った、なんて絶対に言えなかった。もし言ったとしたら"それはお前が女だからだ"って言われるに決まっているから。」と述べています。

↑(Pic by flickr)料理の世界は上下関係が厳しい重労働の世界

しかし、女性シェフの草分けと言われ、高名なレストランの経営者、そして作家として活動しているアリス・ウォーターズ氏が、「今こそ、レストラン業界は変わるべきだ」と述べているように、最近では経営にもまともな人事部を設け、育児休暇や病気休暇、パートタイム制、社会保障などを整備し、働きやすい環境を整えて、離職率の低下を目指す動きが見えてきています。

「結局、良い厨房といえるところでは男性も女性ももはや関係なくなっている。」と様々なレストランを経験したローレン・デステノ氏は述べており、日本でも女性の寿司職人は増加傾向にあることから、「従来の男性職場が永続するという保障はなく、むしろ女性や今時の若い男性が働きやすい場へと変えていく時代ではないか」という意見も増えてきています

↑(Pic by flickr)アリス・ウォーターズ「料理の世界で女性が息苦しく感じる時代は終わった。」

女性達シェフが集まるイベントでは、自分達が獲得した賞の話よりも、新しい料理のテクニックを共有したり、お互いを励ますことでネットワークを広めることが男性に比べて圧倒的に多く、経営的な観点からも「男というものは任せておくと物事をめちゃくちゃにしてしまう生き物。リーマン・ブラザーズがリーマン・シスターズだったら、世界金融危機の引き金となった金融破綻も起こらなかった。」とフランスの政治家クリスティーヌ・ラガルド氏は述べています。

わずか10年でミシュランの星の数が世界一にまで成長した、スペインのサン・セバスチャンという街では、伝統的な弟子入り制度を廃止し、レストラン同士でレシピを共有することで街全体の料理の質を上げていきました。

↑(Pic by flickr)「共有」&「コラボレーション」はどの業界でも一番大切なキーワード

1960年代後半に、アメリカを発端とするウーマンリブと呼ばれる女性解放運動では、自宅で子育てや家事にばかり従事している女性たちに向かって「台所を出よう」というスローガンを掲げ、外に出て男性と同等に働くことが美徳とされました。

最近では、マイクロソフトの最高技術責任者(CTO)であったネイサン・ミアポルドさんが料理の世界に転職したように、「食」に対する世の中の意識は年々高まってきています。

↑マイクロソフトのCTOが料理界へ転職。(Pic by Flickr)

すでにスペインでは、有名なシェフの人気はサッカー選手と同じくらいとも言われていますが、世の中の食に対する 意識も高まったことで、料理が家庭内のルーティン・ワークではなく、ひとつのクリエイティブな作業として見られるようになってきているのかもしれません。

「クリエイティブ」や「共有」という言葉は、現在どの業界でもキーワードになりつつありますが、料理業界に女性がもっと進出しやすくなっていくことで、食のあり方自体がどんどん変わっていくのではないでしょうか。

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Pua Lililehua (Leading&Co.)
ハワイの諺、Iku ka makemake e hele mai, hele no meka malo'el o'e ”行きたければ自信をもって行きなさい”の精神と徹底したリサーチで、2年先を行くライターを目指します。
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