​マイクロソフト元CEO「自宅の本棚に並ぶ本は、今の自分の血肉であり、これからの自分をつくる栄養素」

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Pic by sharyn morrow

今年アマゾンが日本語書籍に対応したKindle For PCの提供を開始したことが話題になったように、電子書籍のサービスが一般にも広がりつつあります。

タブレットが普及しているアメリカでは、90%の人が週に2,3回以上夜間に端末を使用していると答えていますし、2014年には28%の成人した男女が電子書籍を読むという調査結果も出ており、その数値は2011年からの3年間で11%増加したことになります。

世界有数の経済誌Forbesで働くマイケルさんは、収集した本を電子書籍に切り替えたことで、本が増えるたび広い部屋に移り住む必要が無くなり、「家賃を気にせず家探しができるようになり、徒歩で通勤できるようになった。ここ数十年で一番身軽になった。」と述べています。

↑90%以上の人が週に2,3回は夜間タブレットで本を読む。(Pic by Peggy2012CREATIVELENZ)

しかしながら、デジタル化した文字に慣れてしまうと、読書の時間が途切れ途切れになったり、読書する内容が断片的になる傾向にあるようで、長編の本と向き合うことを難しいと感じる人が増えてきています

こういったスクリーンの文字を読む際に文章を流し読みする傾向は「Fパターン」と呼ばれ、目からの情報に頼ってタイトルと段落の書き出しに注目するため、文章の意味を考えて理解する経験が薄くなると指摘されています

学生を対象にした調査では、デジタルではなく印刷された本を読んだ生徒の方が文章読解でよい点数を取ることができたという結果が出ており、電子書籍ではページをめくりながら感じる本の厚みなどの感覚的な経験がないために、ストーリーを順番どおりに記憶することも難しくなると考えられているようです。

↑紙の本で勉強した方が理解力は高い。(Pic by amanda tipton)

ハーバードメディカルスクールが、就寝前の電子書籍の読書が睡眠に与える影響をリサーチしたところ、就寝前に印刷された本を読んだグループよりも電子書籍を読んだグループの方が寝付くまでに10分多くかかり、翌日の朝もしっかりと目覚めた状態にもっていくまでに数時間多くかかったという結果が発表されました。

また、8歳以下の子供向けの本の市場では、電子書籍の売り上げは5%にも満たないとされており、親は自分が根っからのKindleユーザーであっても、紙の絵本を読み聞かせることはスプーンの使い方を教えるのと同じように、親から子供に受け継がれる大切な通過儀礼だと考えるようです。

寝る前の読み聞かせを習慣にしているマシュー・トムソンさんは、「仮にiPadで読み聞かせをしようと思っても、子供はiPadを本ではなくゲームの一種だととらえているので、子供の心は読書ではなくゲームのほうに向いてしまう。」と話します。

↑ツイッター創業者「親としてテクノロジー中毒から子供を守る責任がある。」(Pic by Joi Ito)

印刷された個々の本だけではなく、本棚もまた電子書籍にはない経験を与えてくれると考える人は多いようで、無類の読書家である小説家のアルベルト・マングェルさんが、「書庫はその人の肖像画だ」と表現したように、本棚を見ることでその人がどんな人なのかをイメージすることができる、その人の経験を共有した気になる、ということは自らの経験からもよくわかります。

八納啓造さんが、著書「わが子を天才に育てる家」の中で、欧米ではクリエイティブな家族の家に招待されると、必ずといっていいほどライブラリーや書斎に通されると述べているように、本棚に並んでいる背表紙が見えるだけで知識欲が増したり、会話を始めるのに本棚ほどいいきっかけはないと考える文化が欧米には根強く残っています。

本棚はその人の肖像画(↑Pic by Flickr

Psychology Todayの記事によると、本棚のスペースはその人の脳の領域の延長線上にあるという見方をすることもでき、求める情報のある本を本棚の位置で感覚的に覚えていることができますが、物理的な空間としての本棚ではない電子書籍のフォルダでは、その経験をすることがまだ難しいとされています

日本マイクロソフト元CEO成毛眞さんは、著書「本棚にもルールがある」の中で、興味があるけれどまだ読む気にならない本を本棚に置き、時々手にとっては「やっぱり難しい」と元の位置に戻す作業ができるだけで、本を手に取ることもしない人とは確実に差がついていく、と述べています。

↑本棚のスペースはその人の脳の領域の延長線上。(Pic by sharyn morrow)

電子書籍が普及しているアメリカであっても、69%の人が印刷された本を読むという結果が出ており、2011年から2014年までに2%しか減っていないことからも印刷本には揺るがない価値があることがわかります。

リラックスした状態で印刷本に向き合うスローリーディングによって、感性が豊かになり思慮深く考える経験ができるという研究結果も発表されており、新しい本を購入したときの印刷のにおい、昔読んだ本の折れ目から感じる知識を得たときの感動など、物理的に触れることができる印刷本の体験は五感に深く残るのかもしれません。

アマゾンがオンライン書店を広めたことで多くの書店が倒産に追い込まれてしまいましたが、いくらオンライン書店や電子書籍が普及しても、人類の歴史の中で何百年と続いてきた「紙で読む」という行為がたった数十年で変わることはないでしょう。将来的には電子書籍の割合の方が多くなるかもしれませんが、今のところ五感を最大限に活用する「紙の読書」はまだまだなくならないのではないでしょうか。

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ヘヤジン編集部
部屋探しが3度のご飯より好き!部屋探しによって人生をより良く変える「ヘヤ・ハッキング」の提唱者。『ヘヤじい』の愛称でもお馴染みのヘヤジン編集部員。
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