​次世代の野外フェスのあり方「前年のフェスで回収された生ゴミを肥料して、畑でとれた野菜を提供。」

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(Pemberton music festival)

夏の楽しみのひとつに夏フェスが挙げられますが、観客は普段のストレスの反動で、ビールや食べ物を好きなだけ飲んで騒いでやりたい放題の「モンスター」になるとも言われます。

そんな観客の残す大量のゴミや、電力消費量の多さが問題視されており、オックスフォード大学が、イギリス内で行われる500あまりのフェスの環境に及ぼす影響を分析した研究結果によると、二酸化炭素の年間排出合計量は84,000トン(2010年当時)にものぼりました。これは杉の木約550万本が1年間に吸収する二酸化炭素の排出量に相当します。

世界的な野外ロックフェスでイギリスで開催されている「グラストンベリー・フェスティバル」では、缶やペットボトルだけでも、54トンに及ぶゴミが排出されるという結果が発表されており、イギリスでは、屋外フェスティバルにおける、環境への配慮が進められています。

↑日々の反動で、モンスター化する人々。(Geoffrey de Kleijn)

環境問題を考慮している、ロンドン近郊のイノセント・アンプラグド祭では、ゴミの原因となるビールとファーストフードでなく、地元で獲れたオーガニックなメニューを提供し、それを食べること自体が参加者にとっての大きな楽しみとなっていますし、日本でも、北海道で開催されるRISING SUN ROCK FESTIVALでは、前年にフェスで回収された生ごみを堆肥にして畑でとれた野菜を、翌年のフェスのフードメニューで提供しました。

日本を代表するフェスのひとつFUJI ROCK FESTIVALや音楽プロデューサーの小林武史さんとミスターチルドレンのボーカル櫻井和寿さんが立ち上げたap bank fesなどもエコを意識していますし、日本人は海外と比べると圧倒的にマナーがいいため、日本のフェスは世界的に見ても1、2を争うほどきれいだと言われていますが、ゴミへの配慮は十分でも、人々の音楽の楽しみ方は、まだまだ海外のエコ・フェスと大きな違いがあります。

↑エコは最近の音楽フェスのトレンド。(Nick)

前述のインセント・アンプラグド祭で使用する電力は、太陽光と観客の動くエネルギーのみでまかなっており、wi-fiも用意されていないため、観客はネット環境から完全に解放され、フェス中は音楽ライブやDJ、そして、ディスカッションなどで、大いに盛り上がります。

一方、日本のフェスでは、観客はスマートフォンを手放さず、ネットで「フェス」を検索すると検索ワードの上位に「充電場所」があがってきます。

観客は、フェスで仲間と音楽を聞いている間も、ツイッターやフェイスブックに画像をアップして情報を発信することを考えていて、そのときの音楽や熱気そのものを、五感で感じ取れているとはいえませんし、そんなことよりも、今の自分の状況を発信しなければという焦りが先行してしまっている様子が伺えます。

早く発信しなければ今はどんどん過ぎていく。(FaceMePLS)

歌手の安室奈美恵さんは、某雑誌の取材で、「気がつくと、誰かと同じ空間にいても、お互い無言でスマホの画面を見ていたりする」とネット依存だったと告白し、体調のコンディションを整えるために「ITデトックス」を始めたと発言しましたが、ここ数年、さまざまなリサーチ結果に基づいて、ITデトックスの重要性が訴えられています。

5、6年前から話題になっているノモフォビア(携帯電話依存症)は、携帯が手元にないと恐怖や不安にかられる症状で、2015年7月には、香港の地下鉄内でスマートフォンが動かなくなったために暴れだす女性の動画が話題になっていました。

携帯電話向けのセキュリティ対策アプリを開発するLookoutが2000人のアメリカ人を対象に行った携帯電話に関する意識調査によると、回答者の60%近くは1時間に1回はスマートフォンをチェックし、トイレの中や食事中、そして、ベッドに横になっている時にもスマートフォンを見ていることが分かっており、スマートフォンを持っている人の多くが、ノモフォビアの潜在患者となっています。

ノモフォビア(携帯電話依存症)は携帯を持たない事の恐怖や不安症状のほか、体の不調も引き起こす。(Henti Smith)

「デジタルデトックスのすすめ」の著者でライフハッカー[日本版]の編集長でもある、米田智彦さんは、情報を遮断して生まれる効果について、次のように答えています。

「五感をフル活動させて何かを感じ取るといった能力は、社会が便利になる半面で退化していくのかも知れない。」

なかなかスマートフォンを手放せないからこそ、強制的にITデトックスをした人たちはSNS疲れが解消されただけでなく、それぞれ「仕事の効率が上がった」り「音楽や小説などに対する感受性が上がった」ことを実感しています。

↑ある程度、デジタル機器を制限しなければ、五感はどんどん鈍っていく。(jurek d.)

自然の中で生演奏を聞き、人々と一体になって、一緒のときを過ごすことがフェスの醍醐味であるにもかかわらず、都会の生活を引きずることで自然を汚してしまったり、いつものようにSNSを気にかけたりしていては、自然の中でフェスを楽しむ爽快感を味わうことはできません。

フェスに出かける前は、仲間との連絡は事前に済ませ、スマートフォンを自宅に置いていきましょう。そうすれば、自然と一体となって感性が解き放たれ、本来フェスで得られる音や風、そして太陽の光を感じ、溜め込んだストレスをエネルギーとして吐き出し、新たな生命力を充電することができます。

夏フェスで充電すべきなのは、スマートフォンではなく、自分のエネルギーであることを、忘れてはいけません。

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関 希実子 (Leading&Co.)
「No」と言えない日本人代表。多民族・多文化都市シドニーに移住したことをきっかけに、イージーな価値観を勉強中。
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