ニューヨーク「どこよりも速くて、激しく汗まみれな街」

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(Chris ord)

ニューヨークはアーティストが集まる街として、今だに変わらぬ地位を誇っており、2012年の時点で、絵描きやダンサーなども含めた芸術家の数は14万1000人に達成したそうで、アーティストたちは一様に、ほかの街にはないエネルギーがニューヨークにはあり、ニューヨークを去れば何かを失うと感じているようです

ニューヨークが舞台の映画「ブラック・スワン」で、アカデミー主演女優賞を受賞したナタリー・ポートマン演じるバレリーナが、芸術以外の全てを失ってまでも自分の魂を燃やし尽くしたように、ニューヨークという街にはアーティストを虜にする魔物が住んでいるという気配すら伺わせます。

↑ニューヨークにはアーティストを虜にする魔物が住む。(RyanVaarsi)

Dark.Cyanideという呼び名で知られる写真家は、日々刻々と変わる摩天楼の魅力に取りつかれた一人で、ニューヨークの巨大さに魅せられ、ビルの72階という目もくらむような高さから、その景色をファインダーに収めることにも成功しています

彼のようにニューヨークを撮ることにこだわる写真家は多く、スタンリー・グリーンバーグは、お役所仕事をやめてニューヨークという街の見えざる芸術を撮り続け、ニューヨーク水道局の心臓部ともいえる制御室やマンハッタンの停泊所の地下のワイヤー室、そして廃墟となったエリス島移民局の病院内部など、普通に暮らしていては目にすることのないものにこそ、我々の暮らしに欠かせないNY社会の魂を見ることができると述べています

↑何気なく歩いている都市には、もう一つの見えざる都市の姿がある(Mattoe Bevilacaa)

映像ディレクターのジョージ・グレヴィルは、2010年に広告会社Mother New Yorkと、彼女が所属する製作会社LEGSで、18階建155部屋のホテルを使い、約20分に及ぶファッションパフォーマンスを行い、詰めかけた2500人以上もの人々を魅了しましたが、彼女はニューヨークについて、こう述べています

「どこよりも凝縮していて、どこよりも速くて、激しく汗まみれな街がニューヨークだと思う。でたらめな要素は少しもなくて、すべてが本能に基づいている。私はそんなふうに粘り強く生き抜こうとするニューヨークのスピリットを愛しているわ。」

↑ニューヨーク「どこよりも速くて、激しく汗まみれな街」(Cattakat)

独学で建築を学び、香川県直島町にある地中美術館や、表参道ヒルズなどを手掛けたことでも有名な安藤忠雄氏は、独特の建築表現で世界中の多くの賞を受賞し、現在、ニューヨークに2016年竣工予定の高級集合住宅を建設中で、今の心境を以下のように述べています

「人は感動すると、より大きな感動に出会いたいという気持ちが強くなります。そしてそれが強まれば強まるほど、面白いものに対する嗅覚が鋭くなり、創造的になる。まさに、好奇心の大きさが、そのままその人の生きる力になると言っても過言ではありません。」

↑より大きな感動に出会いたいという思いが、創造力を強くする。(Forgmind ArchiMedia)

ニューヨークを拠点にしている日本人アーティストも数多く存在し、28歳で脱サラしてニューヨークに飛んだ画家の森本和也さんは、ギャラリーなどに作品をおかずに、「今を生きる」ために、ニューヨークの街を描き続けているそうで、はじめてニューヨークに来たときのことを、「"ここだ"と思った」と述べており、タイムズスクエアなどの観光地ではなく、住宅街のヴィレッジでストリート画家でい続けるのも、描く街に住んでいる人が誇りを持っているからだと話します。

↑「今を生きる」ためにニューヨークを書き続ける。(Mo iza)

2015年2月に西武渋谷店で開催された写真展「アドバンストスタイルーNYマダムのおしゃれスナップ」では、ニューヨークに住む60~100歳の女性のストリートスナップが約150点展示されましたが、写真を撮ったアリ・セス・コーエンは、祖母から、「いつかニューヨークへ行きなさい」と強く勧められていたそうで、実際にニューヨークに移り住んでみて、生き生きとしたエネルギッシュなお年寄りが多いことに驚いたそうです

↑ニューヨーク。行けば分かる。(Ryan Varsi)

ニューヨークのストリートで、ファッションスナップを半世紀にわたって撮り続けている写真家ビル・カニングハムは、85歳になった今でも自転車で街中を走り回り、面白いファッションのあるところには嵐であっても駆けつけないと気がすまない、むしろ天候の悪い日こそ自然体を撮ることができるチャンスなんだとさえ話します。

アーティストをニューヨークへ惹きつけているのは、芸術に魂をささげるならば、なりふり構わず命が燃え尽きるまで芸術を追求することが許されるという自由があり、人種や肩書きなどを気にすることなく、「今この瞬間」の芸術に貪欲になることができるからなのかもしれません。

参考図書:URBAN RESEARCH: NEW YORK、ドキュメンタリー映画『Bill Cunningham New York』

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関 希実子 (Leading&Co.)
「No」と言えない日本人代表。多民族・多文化都市シドニーに移住したことをきっかけに、イージーな価値観を勉強中。
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