ミシュランの星の数、ダントツ世界一「自分の店でお客を独占しようとする限り、美食都市は作れない。」

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人口わずか18万人の小さな街スペインのサン・セバスチャンにはミシュランの一つ星レストランが4店、二つ星レストランが2店、そして三つ星レストランが3店もあり、いま世界中の美食家がこの小さな街に集まってきています。

もちろん、人口一人あたりのミシュランの星の数はダントツの世界一で、もともと目立った産業や観光スポットがなかった街が、わずか10年程度で美食世界一になったことは業界的にも異例のことでした。

↑サン・セバスチャン「人口一人あたりのミシュランの星の数はダントツの世界一」(Pic by Flickr)

世界の料理の中心と言えば、70年代まではフランス料理、その後、80年代にはトレンドがイタリア料理に移り、90年代に入ると寿司に代表される日本食がブームを巻き起こし、そのブームは2010年代の現在も続いています。

そして、今後のレストラン業界の未来展望が分かると言われるイギリスの「レストラン」誌が注目しているのがスペイン料理であり、人口わずか18万人の小さな街サン・セバスチャンは従来とは全く違うやり方で、世界一の美食都市を作り、新しい都市として発展させていきました。

↑サン・セバスチャンは従来とは全く違うやり方で、世界一の美食都市を作り上げた。(Pic by Flickr)

料理業界では、皿洗いとしてレストランに入り、師匠と弟子という関係を10年以上経て、一人前になりますが、この古い価値観を壊し、新しい料理を追求しようとしていたサン・セバスチャンの人たちは、自分の技やどこかで習得した新しい料理法をお互いに教え合うことから始めました。

いままでであれば、どこかで修行を積んだシェフが、故郷でレストランを開き、人気が出れば、そのレシピやノウハウなどは一般には公開せず、街のお客さんを独占しようと考えますが、そうすることで、ある特定の店が流行ることはあっても、街全体が美食都市になることはありません。

↑ある特定のレストランがお客を独占しても、美食都市は作れない。(Pic by Flickr)

しかし、ある特定のレストランではなく、サン・セバスチャンの街全体が美味しいと評判になれば、一つの街に収まりきらない人たちをその地へ呼び込むことが可能になり、レシピを公開したり、様々な人が集まって多様性が生まれることで、今まで作ることができなかった料理を開発することもできます。

さらにグローバル化が進んだことで、世界中どこにいても、スペイン料理など食べることができそうな感じがしますが、サン・セバスチャンの料理人は、その地でしか獲れない食材を使って料理をすることをポリシーとしているため、いくら東京で食べるスペイン料理の「見た目」や「素材」が同じでも、彼らが作る料理は絶対にサン・セバスチャンでしか食べることができません。

↑レシピを公開し、多様性が生まれる環境を作ることで、新しい料理がどんどん生まれてくる。(Pic by Flickr)

もし東京で同じことをしようと思えば、本当の江戸前鮨を提供し続けるために、まず東京で美味しい魚が釣れるように綺麗な海を維持する考えを持たなければなりませんが、外食産業のチェーン店は増えるばかりで、もっと食を文化として残すことを考えていく必要があります。

誰に何を訴えかけたいのかさえ分からない「ゆるキャラ」に、街がいくら予算をつぎ込んでも、そんな小細工で海外の人を呼び込みことは難しいのではないでしょうか。

↑正真正銘のクオリティーでなければ、「本物の人」は集まってこない。(Pic by Flickr)

料理の世界でなくても、「多様性」は間違いなく21世紀を生きる上で、最も重要なキーワードであり、サン・セバスチャンのあるスペインのバスク州からも、税金で何人ものシェフが京都に修行に来ており、良いものであれば新しいものをどんどん取り入れることで、料理のクオリティーを上げる努力をしています。

アメリカがハリウッドの映画を世界に輸出したように、現在スペインでは「食文化」を世界に輸出しようとしており、今度どうなっていくか非常に楽しみな国でもあります。

「ゆるキャラ」でごまかそうとせず、人やサービス、そして街も含めて、正真正銘の本物を作らない限り、日本が観光立国になるのはまだまだ先のことなのかもしれません。

※参考: 「人口18万の街がなぜ美食世界一になれたのか―― スペイン サン・セバスチャンの奇跡」高城剛

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ヘヤジン編集部
部屋探しが3度のご飯より好き!部屋探しによって人生をより良く変える「ヘヤ・ハッキング」の提唱者。『ヘヤじい』の愛称でもお馴染みのヘヤジン編集部員。
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