ロンドンの新しい経済循環「経済成長の半分はスモール・ビジネス」

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イギリスは1980年代のサッチャー首相の厳格な民営化政策により、国が経営していた事業が民間企業として運営されるようになって、ビジネスの効率化を図った結果、先進国の中で唯一長期的な経済発展を遂げていきましたが、失業者の増加やサービスの質の低下などの問題を生み出し、経済利益だけを追求した都市開発がうまくいかないのも事実です。

最近のギリシャが経済危機問題で、国際通貨基金(IMF)が提案した同じような民営化政策に、「NO」と言えるようになったように、従来の経済成長の仕方とは違った政策や新しいビジネスのあり方が、必要になってきているのではないでしょうか。

↑民営化による経済発展に「NO」 (Jash)

民営化に代わりイギリスの経済を支えている要素に、「スモール・ビジネス」(SMEs)といわれる中小企業やベンチャー企業などがあります。

スモール・ビジネスには様々な定義がありますが、欧州委員会では 、年間の売上高が3900万ポンド以下で、250人以下の従業員を所有する会社と定義され、2013年にイギリスで登録されたビジネスの99%が、このスモール・ビジネスであり、約50%のイギリスのGDPに貢献しています

スモール・ビジネスは、ビジネスの効率化や雇用機会を提供するのに重要な役割を果たしています。イギリスのソフトウェア会社の国際マーケティングの責任者であるアンドリュー・ミラード氏は、「中小企業はイギリス経済の重要なエンジンである」と言っているように、このようなスモール・ビジネスの約20%は、一年で50%の成長率を記録し、 2014年には約60%の民間雇用を生み出しました

↑スモールビジネスはイギリスGDPの約半分を占める (bayerberg)

このようなスモール・ビジネスの一つに「ストーリー・テラス」といって、家族や故人の思い出をストーリーとして本にすることができ、書きたいストーリーの内容に合ったライターを紹介してもらい 、イラストや包装などすべてをカスタマイズで、その人のための自伝記をつくるサービスがあります。

このサービスは自分の先祖や家族の繋がりを知りたいというような現代人の要求が増えたことに感化されて始まり、誕生日プレゼントや、故人の思い出を形にして取っておきたいという人に利用され、人気を集めています。

その他にも手書きのステーショナリーの販売や、食品廃棄に注目したレストランなど、ビジネスモデルは数え切れませんが、それぞれに共通しているのは、利益を求めることよりも、自分のやりがいや、利益を社会に還元することを目的に運営されているということではないでしょうか。

↑最終的にはやり甲斐が利益に変わる (Startup Mena)

ある調査ではイギリスの52%のスモール・ビジネスが、持続可能なビジネスモデルを採用し、そのコスト利益を実感している事もわかっており、ロンドンにあるBusiness in the CommunityというNGOのジェーン・ピッチャード氏は、「ビジネスのグリーン化ということだけではなく、社会的な役割や利益を考えることがスモール・ビジネスには重要なことである」と言っているように、従来の物質的利益を追求する「for-profit」から、社会や環境にも配慮した「for-benefit」なwin-winな関係を作る事が、ビジネスの成功とイギリスの経済発展へと繋がっています。

↑ロンドンでは「ビジネスをする」という観点が大きく変わりつつある (Tech Hub)

このようなスモール・ビジネスが生まれる環境はよく、ロンドン、ニューヨーク、ベルリン、そしてサンフランシスコなどのような都市の生活の質や多文化であるということに注目されていましたが、最近の調査でこのようなスモール・ビジネスが生まれるのは、それを後押しするような法律の整備や、政府の援助などの都市開発政策による影響の方が強いということがわかっています

実際、イギリスでは政府からの職業実習制度は、スキルを持った人材が欲しいスモール・ビジネスと大学や、専門教育を受けていない市民の資質を向上させる機会を設けるために重要な役割を果たしています

さらにはゴールドマン・サックスHSBCなどの大手投資銀行が、スモール・ビジネスをサポートするプログラムを提供するなど、政府の都市政策、そして企業のプログラムが混ざり合って、スマート・ビジネスが発展しやすい環境をつくりだしているのは明らかです。

↑政府、企業、そして民間が同時に混ざりあって、科学変化を起こすロンドン(PROLiberal Democrats)

日本経済は世界で3番目に大きいですが、人が子供から大人に成長するのと同じように、経済も一定期間を過ぎると今までと同じように成長を望むことは難しく、経済利益だけを目的にした都市の発展は、すでに時代遅れになってしまいます。

輸送サービスを提供するFedExの副社長アラン・グラフ氏は、「スモール・ビジネスは最大のビジネスチャンスである」と断言しているように、日本がスモール・ビジネスへの投資の機会を逃したときの代償は経済発展だけではなく、社会利益にも大きな影響を与えることは間違いありません。

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ヘヤジン編集部
部屋探しが3度のご飯より好き!部屋探しによって人生をより良く変える「ヘヤ・ハッキング」の提唱者。『ヘヤじい』の愛称でもお馴染みのヘヤジン編集部員。
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