​スウェーデンのマルメ、環境汚染都市から、数十年で環境先進国へ

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(Maria Eklind)

東日本大震災を経て、原発反対と叫ぶ人は60%にも達し、震災後の復興努力によって、太陽光発電による電力供給量が原子炉が供給する同等の供給量まで増加しましたが、それでも日本の燃料自給率は2010年時点で17%と、主要先進国9ヵ国の中で最低の供給量となっています。

電力供給の90%を海外からの化石燃料の輸入に頼っていて、日本の次に低い割合のドイツの41%と比べても、その自給率の低さは突出しています。

↑世の中の考え方が、原発維持をどんどん難しくする。(Jun Teramoto)

化石燃料に過度に依存すれば、安全性や価格の変動に大きく左右されることになりますが、環境問題に敏感な北欧の国々では、エネルギー問題を「見える化」し、その土地の特色を生かして、市民一人ひとりが本気で、環境問題に取り組む文化が作られつつあります。

北欧スウェーデンの最南に位置する都市、マルメ(Malmö)は、海峡にかかる橋を渡ればすぐにデンマークという立地からコペンハーゲンと並ぶほどの大都市で、1980年代後半までは多くの造船場が海岸沿いに連なる環境汚染のひどい商業都市でしたが、現在では、"持続可能な都市開発"にフォーカスした活動が世界中から評価され、環境保全活動に関する数多くの賞を受賞しています。

電力は、1年を通して風の強い日が多い気候を利用して、風力発電でまかない、バスの燃料は生ごみをバイオガスに変換したものを活用し、街中は歩道や自転車道が整備され、そして、立てられているビルは地下に設置された地熱貯留層で温度調節ができるようになっています。

↑数十年で汚染都市から、世界的に評価される都市へ。(Maria Eklind)

スウェーデン出身のロックバンド、カーディガンズの女性ボーカル、ニーナ・パーション氏は、CNNのインタビューに対して、故郷であるマルメのことを、「マルメはとても誠実で誰でも受け入れられる街よ」と語っていますが、マルメ市内の学校では、生徒が、地下に設けられた肥料を作るためのし尿処理施設や、太陽光発電による電力管理場なども気軽に見学ができるように作られており、子供たちが日頃から環境課題に目を向けることができる環境がしっかりと整えられています。

↑ニーナ・パーション「マルメは環境意識が高くて、どんな人でも受け入れてくれる街」(Oliver Lopena)

このような活動の一番の目的は、全体的な環境保全の理念を強調することで、そこに住む人々が、なぜこの水路はこんな形をしているのかを理解し、一人でも多くの住人に活動に参加してもらうことが大切であり、マルメ市内でレストランを経営する、Björn Stenbeck氏も次のように述べています。

「我々のようなレストラン経営者も(環境活動に対する)トレンドを作り、人々の環境保全に対する選択に影響を与える重要な役割を担っていると強く感じている。自分のことばかり考えるのをやめたら、持続可能な社会が作れるだろう。」

↑経営者が、自分たちのことばかり考えていたら、社会が持たないだろう。(Christer)

マルメでは、街の一人ひとりが地球と人に優しい街づくりの専門家になりつつあります。世界から賞賛されているのは、行政と市民が一体となってエネルギーの教育を日常に取り入れ、実践例も「見える化」して共有し、知恵を出し合って次につなげていこうという市民一人ひとりの姿勢の現れなのではないでしょうか。

化石燃料で成り立っているこの便利な生活が多少不便になるとしても、自然の素晴らしさと脅威の両方を知る日本人だからこそ伝わるものがあるのかもしれませんし、実際、原発などに頼らなくても、生活が成り立つことを海外の様々な国が少しずつ証明しようとしていることに目を向けていかなければなりません。

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関 希実子 (Leading&Co.)
「No」と言えない日本人代表。多民族・多文化都市シドニーに移住したことをきっかけに、イージーな価値観を勉強中。
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