​明治時代の住所で目的地に着けるロンドンとケンブリッジ、Google Mapがないと身動きが取れない東京。

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(Jae Storer)

「東京で数年生活した若者が、ギスギスした子に変わってしまったんだ。あんなに心優しい子だったのに。」とある経営者の方が言っていました。

東京の人たちの歩く速度は速く、街はモノで溢れ、そして利益を産むための組織が所狭しと並んでいますが、私たちの心は社会や企業の仕組みに管理され、Wifiがなければ何もできないアンドロイド人間のような人たちがどんどん増えています。

↑テクノロジーにどんどん人間味を奪われることで、渋谷の若者文化もどんどん衰退している。(Yoshikazu TAKADA)

日常のライフスタイルの中でも、お風呂のお湯は勝手に満杯になり、「お風呂が沸きました」と機械が教えてくれますし、夕食も「ご飯が炊き上がりました」とアナウンスが流れますが、このような自動化に慣れていくことで、従来、人間の誰もが当たり前の感覚として持っていたご飯を炊いたり、お風呂を沸かすのに「どれくらい」の時間がかかるのかという感覚がどんどん鈍っていきます。

↑機械が生活にどんどん入り込むことで、人間が従来持っていた「感性」や「直感」というものはどんどん失われていく。(Koichi Taniguchi)

最近、ヨーロッパではスローな生き方が見直され、欧州のホテルは日本やアメリカ資本のホテルとは違い、高級になればなるほど、質素でこじんまりとしたものが多く、エレベーターも小さく手動、ドアも手動のものが多く、トイレでは自動で水が流れないところも多いようです。

アメリカ人が欧州を訪れると、人々の質素な暮らし方に驚くと言われますが、ヨーロッパの人たちは、効率化や便利さよりも何が大切か、外見の綺麗さではなく、どんなのものに本当の価値があるのかを理解しているのではないでしょうか。

↑ヨーロッパのホテルは高級になればなるほど、質素で素朴なものが多い。(sdobie)

NHKの元アナウンサー下重 暁子さんは、取材のためロンドンとケンブリッジを周った時、明治時代の住所を見せただけで、目的地に到着できたことに感銘したと著書の「持たない暮らし」の中で述べていますが、家も番地も長い間変わらないイギリスに対して、一年単位で街の構成が変わっていく東京では、物事の考え方が大きく違うことが分かります。

↑明治時代の住所で目的地に着けるイギリス。毎年街の構成が変わっていく日本。(Brian Negin)

東京の街でもチェーンのスーパーマーケットで一言も話さず、レジで会計を済ますのではなく、作った人や運んだ人の顔が見え、肉はこの店、魚はあの店というように、しっかりと言葉を交わして、情報交換しながら買い物をすることで、人間の感性が磨かれることは間違いありませんし、「タテマエ主義の東京」に対して、「ホンネ主義」の大阪では、「おっちゃん、これ負けてくれへんか?」と人間味を込めて、値切るのが当たり前だと聞きます。

こう考えるとイオンモールなど個性がないものが作られ、地方がどんどん「東京の二軍化」していくなかで、大阪が独自の文化をしっかりと築いてることが分かります。

↑東京の二軍化となる地方。独自の文化を保つ大阪。(Dean Lin)

本当の文化とはアナログとデジタルを両立した人間の知識の結集であり、結局、私たちは機械によって効率化し、生み出した時間を無駄にしてしまっているのかもしれません。

故人・司馬遼太郎さんは生前、「不用意な拡張や破壊を止めて、自然を美しいものとする優しい日本に戻れば、この国に明日はある。」と述べていましたが、経済価値や効率のプライオリティー重視の考え方を改めていく必要があるのではないでしょうか。

↑司馬遼太郎「自然を美しいものとする優しい日本に戻れば、未来はある。」(Atpress)

「文化でメシが食えるか!」と述べる人も多くいますが、2009年にアマゾンに買収されたアメリカのザッポスという会社は、すぐ利益を生み出すことができる人たちを不採用にすることで、独自の文化を作っていき、一年で100億円ずつの企業価値を上げていきました。(10年で1000億円の企業価値をつけたと考えると1000億÷10年=100億円)

都市開発や日常のライフスタイルにしても同じことですが、短期的な経済成長や効率化を目指すのではなく、30年〜40年のサイクルで考えた時に、本当に価値があるものは何なのかということを真剣に考えなければなりません。

「文化でメシが食える」と本当に信じることができた人たちが、これからの世の中を盛り上げていくのではないでしょうか。

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ヘヤジン編集部
部屋探しが3度のご飯より好き!部屋探しによって人生をより良く変える「ヘヤ・ハッキング」の提唱者。『ヘヤじい』の愛称でもお馴染みのヘヤジン編集部員。
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