​先達者が進めるエコ都市「予算から一つゼロを取るとクリエイティブに、二つゼロを取るとサステイナビリティが始まる」

  • LINEでシェア

(Mathieu Bertrand Struck)

現在、都市で忙しい生活をしている人たちも、いつかは都市を離れて田舎で暮らしたいと夢見るものですが、持続可能社会の実現に基づいて考えると、都市での生活はエネルギー消費の面で、郊外の生活よりも効率が良いことはあまり知られていません。

例えば、郊外の生活では車が必ずと言ってよいほど必要で、少し買い物をするのにも車を使わなければなりませんが、密度の高い都市では、生活に必要なほとんどの事柄を徒歩圏内で揃えることができ、必要に応じて少し離れた場所へは、優れた公共交通機関が簡単に運んでくれます。

↑エネルギー消費の観点から見れば、都会の生活の方が明らかに効率が良い (Michael Tapp)

しかし、2045年までに都市での生活者は、60億人を超えると言われており、住居の提供、公共機関の効率化、そしてゴミの問題など、都市の問題は山積みで、さらに次々と生まれてくる新興都市の開発にも、新たなアイデアが急務で求められていますが、未来学者のAlex Steffen氏は、「こうした都市こそ、変革の好機です」と増え続ける都市の人口を前向きに捉えています。

現在、世界中の都市が、エコなイメージを取得すべく、様々な施策に取り組んでいますが、単に都市を緑化することだけでは根本的な解決に繋がらず、 「彼らは重要なポイントを見逃している、それは頭上になびく緑ではなくて、足元を支えるシステムのことだ。」とAlex Steffen氏は指摘しています。

↑増え続ける都市の問題をむしろ好機と捉える (Geraint Rowland)

例えば、雨水を蓄えて水の使用を抑えたり、排出されるゴミを土に返すシステムなど、自然と一体化したエコシステムを都市は必要としていますが、こうしたシステムを新たなエコ地域として街に作っていくよりも、既にそこにある無駄なスペースに埋めることや、既存の場所から違った空間を作りだしていくことが大切だと言われています。

エコ都市の先達者であるスイスでは、ゴミをゴミとしてではなく、エネルギーとして捉え、焼却場も郊外に追いやらず、街の中心部に堂々と存在しています。

また、リサイクル率でもドイツと共にEU圏内随一の高さを誇り、多少厳し過ぎるとの意見もある制度を含め、まず教育を徹底して行っており、こうした施設も都市部にまとめて作ることで、森や農地の確保にも繋がっています。

エコ先進国のドイツの都市でも多くの施策が施されていて、ミュンヘンではBMW、AUDIといった巨大自動車企業城下町であるにも関わらず、排気量の高い車の入場を制限するエリアも誕生しており、よりエコロジカルな町づくりが目指されています。

↑スイスはゴミの教育から徹底する (YoungDoo M. Carey)

こうした運動を既に70年代から始めて、今では「世界で最も住み良い都市のひとつ」と呼ばれる街がブラジルにあります。クリティバと呼ばれる世界的には全く無名の街が、エコ都市モデルとして評価されるまでに成長したのには、在職中に数々の奇抜なアイデアを、驚くスピードで実現した当時の市長Jaime Lenerの存在が大きいことは間違いありません。

彼の施策が機智に富んでいて、非常にユニークなのには、予算と時間がまるで無かったことも影響しているようです。例えば、後にパナマ、ボゴタ、そしてロサンゼルスでも導入される「RIT」(BRT:英表記)という独特の交通機関は、バスを地下鉄のように扱ったもので、これによって地下鉄を掘る100分の1の費用で、同様もしくはそれ以上の効果を生み出しました。

また、ゴミのリサイクルでは、スラムの人々がゴミを河川やそこら中に捨てるのに対処すべく、バスチケットやサッカーの観戦チケットと交換するトラックをスラムへ定期的に走らせ、ホームレスやアルコール中毒者には、リサイクル施設で働ける環境を設け、漁師はゴミを釣り上げると換金することができるという制度を作るなど、「予算から一つゼロを取るとクリエイティブに、二つゼロを取るとサステイナビリティが始まるんだ」と市長はお茶目にうそぶきます

↑クリティバの成功は時間とお金が極端に少なかったこと (Mathieu Bertrand Struck)

こうした様々な施策の他にも、バイクレーンや公園の設置、そして様々なもののシェアなど、都市ならではの対策がありますが、街を街として特徴付けるビル群にも、高密度収容力の他に、存在自体がエコロジカルなものになることが求められており、最近ではユニークな建築アイデアが生まれています。

屋上庭園はもちろんのこと、建物自体が風・太陽からエネルギーを吸収し、消費電力の大部分を補うものや、雨水を蓄える設備、そして農園化した高層ビルまで生まれつつあり、近代都市の象徴としてのネガティブなイメージも強かった高層ビル群も今、大きく変わりつつあります。

↑建物自体が自然の一部になることが求められる (Hans Veneman)

東京も2020年のオリンピックに向け、様々な開発に向き合うことになり、部分的にはこれまでの「東京」と、また違ったものに成し遂げていく途中にあります。その開発にあたって、様々な意見が飛び交っていますが、人々の生活を支える都市としての顔を失わず、逆により多くの人々を快適に受け入れる事が出来る都市に生まれ変わるチャンスになって欲しいと、切に願わずにはいられません。

参考文献:

(注1)長谷川明子(2007)『地球と暮らすまちづくり―スイス・ドイツに学ぶ自然』 山海堂

  • LINEでシェア
ヘヤジン編集部
部屋探しが3度のご飯より好き!部屋探しによって人生をより良く変える「ヘヤ・ハッキング」の提唱者。『ヘヤじい』の愛称でもお馴染みのヘヤジン編集部員。
NEXT STORY
​車は街に入れず、移動はすべて船。不便でも、オランダで最も住みたいと思われる街「ギールホールン」
都市 2015.8.10 ​車は街に入れず、移動はすべて船。不便でも、オランダで最も住みたいと思われる街「ギールホールン」 オランダのギールホールンのほとんどの家は、それぞれの独立した小さな島に建っておりますが、この街に住む人たちは、この不便さすらも楽しんでいる…