フランス「子どもを持つ女性の約80%が就業しているという事実」

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(Sean McGrath)

日本の2014年度の出生率は1.42で、2005年の1.26から緩やかに 上昇したものの、晩婚・晩産が進み、少子化の進行は今後も続くと考えられ、政府は子供手当てのような一過性のサポートや、配偶者控除の廃止などで、育児にも就労にも、女性のやる気を搾り出すことに必死です。

先進国で同様に少子化の傾向が見られる中で、フランスでは 2014年度の出生率は2.01と今なお高い水準を維持していますが、フランスと日本は「親」に対する価値観が間逆であることから政策も大きく異なり、フランス社会では、家族の中の「母像の理想」が根強い日本とは対照的に、家族の形のあり方にたいへん柔軟であることが、出生率と就業率の維持に貢献していると考えられます。


↑フランスは家族のあり方が非常に柔軟である (Darren Johnson)

フランスには PACS(連帯市民協約)といって、性別に関係なく、成年に達した二人の個人の間で、安定した持続的共同生活を営むための契約を交わすことが可能で、法的な婚姻関係を結ばない「事実婚」が一般的ですし、非摘出子も珍しくなく、同性婚のカップルが養子縁組をして子どもを持っている数は、2005年の時点で約4万人と推計されます。

法的な書類にも親の性別を明記することはなく、日本の戸籍にあたるフランスの家族手帳には、「父」、「母」と表記されず、 「親」と表記されます

この「母」という概念にとらわれないことは重要で、フランスで子どもを持つ女性は 約80%が就業している言われるように、フランスでは子供を持った後でも、女性が仕事をすることは、難しいことではありません。

↑先進国では子供の数以上に、労働者の数も足りていない (Stefan)

「母」という固定観念が強い日本では、暗黙の了解となっている「仕事より家庭」という意識から、育児中の女性は仕事をあきらめざるを得ず、日本の仕事と家庭の両立度は、調査対象の 18か国中、ギリシャについで二番目に低いという結果が出ています。

さらに、OECE(経済協力開発機構)によると、6歳未満の子どもを持つ女性の就業率において、フランスでは2002年には64.7%で上昇傾向であるのに対し、日本では35.2%と低い値になっており、今後はさらに減少傾向にあるという 調査結果も出ています。


↑子供と仕事「どちらに偏っても、国は成り立たない」 (Darren Johnson)

女性が働き続けることが難しい環境から、そもそも職につくことを望まない、専業主婦願望を持つ女性が増えており、さらに特出すべきことに、専業主婦であっても子どもを産まないという選択肢を取るケースも目立ってきています。

2012年の 博報堂生活総合研究所の調査によれば、20代女性の3人に一人が専業主婦になりたいと回答し、また、「30歳ぐらいまでは仕事し、子どもができたら、その後は家庭に入る」という「隠れ専業主婦志向」が増えているとも言われています。


↑女性のライフスタイルは世の中の需要と逆光するばかり (Or Hiltch)

2000年にフランス人実業家と結婚し、現在パリに在住している元フジテレビアナウンサーの中村江里子さんは自身のブログで、フランスと日本の母親の責任の重さの違いを、次のように述べています。

「当時、日本に住んでいたフランス人からは、「日本人女性との結婚」は反対されたという事実を今回、初めて知りました。それは、日本では離婚などに際して、母親の権利が強く、離婚後、子供は母親に育てられるケースが殆どで、父親とはそれっきり…というケースが少なくないということが理由です」

フランスでは、子供を持てば、親の権利も義務も平等で、たとえ離婚をして夫婦という形でなくなっても、親として子供を協力して育てることが常識であり、性別で親子関係の強さが変わるような価値観は、フランスの男女ともに受け入れ難いに違いありません。

(中村江里子オフィシャルブログ「ERIKO NAKAMURA OFFICIAL BLOG」/ http://ameblo.jp/nakamura-eriko/)


↑フランスではたとえ離婚しても、親として子供を協力して育てていく (Ben Raynal)

日本では、「お母さん」という日本独特の美徳精神が女性自らを拘束し、周囲からも子供の成長に対して、母親に大きな責任を課せられるために、ワークライフバランスが取れている女性は、非常に珍しいですが、日本を下回る出生率のドイツでも、性別役割分担の意識が強く、「妻は家庭を守るべき」という価値観が、子どもを持つ女性の離職率を 上げています。

一方、フランス人は、手抜きができるところでは、手を抜いても構わないと考える合理主義を徹底しており、赤ちゃんは生後数週間で自分ひとりの部屋で眠らせ、パッケージされた離乳食商品も豊富に揃い、母乳のみで育児をする女性も 少ないそうです。


↑しっかりするところはしっかりする。手を抜けるところはしっかり手を抜く。 (davidcwong888)

フランスや北欧諸国では、 経済的な面ですべての層にわたって出生率が高く、出産後に仕方なく仕事に戻るという意識や、キャリア形成のために出産を後回しするようなことは稀で、育児休暇明けの女性の地位が保障される制度もきちんと整備されています。

「母」という枠組みを外して、「親」に統一することで、女性が子育てと仕事の二者択一を迫られることはなくなりますし、同姓婚であっても離婚歴があっても、子供にとって、「親」の立場が変わることもありません。

「母」という概念から解き放たれるのは女性だけではなく、社会がもっと「親」について考えることで、全ての子供に自由な価値観が育ち、出生率も就業率も、未来にわたって高い水準が保たれていくのではないでしょうか。

まずは、政府が社会のお手本となって、「女性」へのこだわりを捨てなければ、いつまでたっても女性が「人」として、仕事も家庭も充実した生活を目指すことはないでしょう。

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関 希実子 (Leading&Co.)
「No」と言えない日本人代表。多民族・多文化都市シドニーに移住したことをきっかけに、イージーな価値観を勉強中。
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